霧月の執筆道場

文章の練習用のブログです。内容はノンフィクション寄りの雑記(Essay)。

散々見知った場所に落ちていた、知らなかったもの

ここ2〜3年ほどになるが、とあるYouTuberの動画を見ている。

 

基本的に私は動画視聴自体がそこまで好きではない。

私が自主的にYouTubeを流すことはほぼ皆無であり、同居中の彼がテレビ代わりに見ているのを一緒に見ているだけである。

自分からは見に行かないが、それでも何度も見ているうちに情が湧くものでもある。

 

そのYouTuberの方をSさんとしよう。

 

Sさんの動画自体は見始めてからは9割以上視聴済みだと思う。

 

Sさんは東北出身の為、長らく東北のとある地方の動画ばかりを上げていた。

それはそれで面白く拝見していたが、

最近、趣向が変わり、旅に出ることにしたとのこと。

旅先には、偶然だが私の住んでいる地元が選ばれていた。

 

私は、引越しは出身県内でしか経験がなく、居住歴はもう三十年弱となる。

元々はドライブをすることが多かった為、県内の主要観光地等は当たり前のように行き尽くしている。

 

Sさんは今回、その私が良く知った県内を観光されていた。

いつもと違い、映される動画は完全に知っている場所が大半だった。

画面に映ったわけではないが、ルート上、家の近くもおそらく通っている。

全体として地元民から見たらなかなかツッコミどころのある回り方をしていたが、それはそれで面白く新鮮味があった。

他県民から見て、この地元がどう見えるかというのが透けて見えているようで、興味深く面白かった。

 

知らない土地は、どこをどう回ってもおそらく大体楽しい。私も一人で出かけることは少し前までは多かった。四国と九州は経験がないが、初めて隣県やそれより遠い県ーー横浜や静岡や滋賀、大阪などに行ったとき、現地のことはあまりわからなかったが、いるだけで楽しかった。

現地で馴染みのない地名を見て、それだけで心が躍った。

 

私は元々、地理が好きなのかもしれない。

学生時代の教科書のうち、一番最後まで取ってあったのは地図帳である。後に高速道路用の地図帳を改めて買い直したが、見ているだけでも楽しい。

 

知らない場所に行って本人が楽しいということは知っていたが、知っている場所に別の意味で新鮮味を感じたのは初めてかもしれない。

Sさんのセンスもあるだろう。最初から地元を紹介しているYouTuberだったらこうは思わなかったと思う。

 

 

私が遠出を渋るようになったのは、体調面での不安が増えたことが大きい。

 

まだ一応20代ではあるが、10代前半の頃から体力や体調に不安を感じており、学業や仕事は私の中では結構無理をして取り組んでいた。

実家にいた頃は特に、この不安を家族や周囲に理解されることはなく、また自分の中でも「こんなことで甘えてはいけない」という自責と「いつまでも同じ調子では働けない」という確信があり、その中で揺れていた。そして実際に、徐々に無理ができなくなっていった。

今、体調への不安が大きくなっているのは、ある意味昔からの予測通りである。

 

彼が一緒ならなんとかなるが、一人では不安が残る為あまり出掛けられなくなった。

だからといって全く出掛けないのも精神的には良くないのかもしれない。それでもあまり出ようとは思えなかった。

 

しかし、Sさんの配信は、もう一度出てみようかという勇気を与えてくれたような気がする。